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【管理栄養士が教える】糖尿病の食事療法の基本

「糖尿病の食事の基本について知りたい」

「糖尿病の食事療法ってどんなことをするの?」

などのお悩みはありませんか?

この記事では、糖尿病の食事療法についてお話しします。

糖尿病の治療

糖尿病と診断されたら、一生糖尿病と一緒に過ごしていくことになります。

そのためには適切な治療をすることが大切です。

糖尿病治療の目標

糖尿病治療の目標は完治ではなく、

症状を抑え、生活の質を下げずに、健常者と同様の生活・寿命を送ることです。

特に、早期から適切な血糖コントロールを行うことで、合併症の発言リスクを軽減させることができるなど、

予後が良くなるとされています。

糖尿病の治療方法

糖尿病の治療方法には、

「食事療法」「運動療法」「薬物療法」の3つがあります。

まずは食事療法の実践と、運動が可能な人の場合は運動療法を併用し、

2~3か月継続した後に数値の悪化が抑えられない場合、薬物療法を開始します。

薬物療法を取り入れた後も、食事療法を併用して行っていくことが重要ですので、

食事療法は糖尿病治療の基軸となります。

また、食生活の悪化が血糖コントロールの悪化に直結しますので、

食事の適正化は避けては通れない道です。

食事療法

糖尿病の食事療法と聞くと、

「食事制限」と考える方が多いかもしれませんが、

食事制限ではなく、食事適正が正しい表現かと思います。


糖尿病だからといって、食べてはいけなものはありませんが、

糖尿病だからこそ病状を悪化させないために、食事で気を付けるべきことがあります。

エネルギー摂取量

糖尿病の食事療法では、エネルギー摂取量の適正化が重要です。

エネルギー摂取量が多すぎると肥満を引き起こし、血糖コントロール悪化の原因になります。

反対に、エネルギー摂取量が少なすぎると、合併症の発症リスクを高める原因になります。


エネルギー摂取量の設定については、以下の計算式を使用して算出することが多いです。

しかし、一人ひとりの体格やライフスタイルにより異なるため、医師・管理栄養士と相談して決めてもらいましょう。

摂取エネルギー量 = 目標体重※1 × エネルギー係数※2


※1 目標体重 65歳未満:BMI22
         65歳以上:BMI22~25
※2 エネルギー係数 軽労作:25~30
          中労作:30~35
          重労作:35~


肥満(過体重)場合、エネルギー摂取量の制限により、

血糖コントロールが良好になったとする報告があるため、

肥満者ではエネルギー摂取量を制限し、適正体重まで減量することが必要です。

(これが糖尿病食=食事制限と捉えられている原因だと思います。)


しかし肥満ではない方に関しては、減量による血糖コントロール改善の根拠が乏しく、

現時点では、エネルギー制限や減量は勧められていません。

栄養バランス

エネルギー摂取量が設定されたら、

エネルギーの50~60%を炭水化物

13~20%までをたんぱく質

残りを脂質とするように、PFC比を設定します。

この際に脂質が25%上回るようであれば、脂肪酸組成に配慮する必要があります。


また、糖質の摂取により血糖値が上昇するため、

糖質(炭水化物)制限が有効とする考えもあります。

一方で、過度な糖質制限は健康問題を助長するとして、嫌煙されてきたのも事実です。

そのように糖質(炭水化物)制限については、様々な議論がされてきましたが、

糖尿病診療ガイドライン2024によって、

「2型糖尿病の血糖コントロールのために、6~12か月以内の短期間であれば炭水化物制限は有効である。」

と提言されました。

日本人において6か月間の130g/日の低炭水化物食の効果を観察した研究で、HbA1cの低下や改善がみられたこと、

欧米を中心とした研究で、炭水化物制限が6~12か月以内の期間であればHbA1cは改善したが、12~24か月以降では同等では同等であったこと、

24か月でのHbA1cは炭水化物制限群で悪化したとの報告があること

などにより、短期間の緩やかな炭水化物制限は2型糖尿病の血糖コントロールに有効である可能性があるとしています。

しかし、糖質(炭水化物)制限は非常に難しいので、管理栄養士指導のもと実施するようにしましょう。

食事療法を成功させるコツ

・適正エネルギー

・栄養バランス

などのが大切な食事療法ですが、それらを成功させるコツや、

それ以外にも血糖コントロールに重要なことについてお伝えします。

早期の栄養指導の活用

早期に管理栄養士による栄養指導を活用することで、その後の血糖コントロールが良好になるとされています。

適切な食事方法を早めに知り、実行することが何よりも大切です。

病院を受診し、外来栄養指導を利用すれば、保険適用で1回数百円で話を聞くことができるので、積極的に利用してください。

食品交換表の活用

糖尿病の食事療法を実施するにあたり、

「糖尿病食事療法のための食品交換表」という本を持っておくだけで、

1日に何をどのくらい食べれば良いか、具体的に理解することができます。

実際の栄養指導でも活用されますが、この本を持っておき、理解することができれば、より血糖コントロールしやすくなります。

約1000円で買えますので、ぜひ読んでみてください。

血糖値を上げる食品について知る

血糖値は糖質の摂取により上昇します。

そのため、どんな食品に糖質が多く含まれているのかを知っておくことも大切です。

糖質を多く含む食べ物

・主食(ご飯・パン・麺類など)

・イモ類

・かぼちゃ

・とうもろこし

・果物

・砂糖

・お菓子

・清涼飲料水

1日3食、規則正しい食生活を心がける

欠食習慣があることや、食事の時間・量が不規則だと、

血糖コントロールが悪くなってしまいます。


・欠食をせずに1日3食食べる習慣をつけること

・食事の時間を決めること

・食事の量を均等にすること

・食べてすぐ寝ない、夜食をしないこと

これらを心がけるようにしましょう。

甘い間食・甘い飲み物を控える

甘い間食・甘い飲み物は血糖値を上げてしまい、

血糖コントロールに悪影響を及ぼします。


間食は甘くないものを選び、適量を心がけましょう。

また、甘い飲み物は極力控え、水やお茶を飲むようにしましょう。


どうしても甘い食べ物を食べたい・飲みたい場合は、

食事と一緒に摂るようにしてください。

1食に追加するという意味ではなく、甘い食べ物を1食分のエネルギーに入れて栄養計算して食べるようにしましょう。

外食・中食では栄養成分表示を確認する

外食・中食は味重視の商売ですので、

味付けが濃くご飯が進むもの、カロリーが高いものが多く売られています。

そのため、外食・中食中心の食生活を送っている方は、栄養管理が難しいです。

外食・中食をするときは、栄養成分表示を確認するようにして、

どのくらいカロリーや炭水化物を摂っているのか確認するようにしてください。

または、それらの写真を撮って、栄養指導の際に管理栄養士と相談して食事内容を決めるようにすると良いでしょう。


私が栄養指導をしているときも、

コンビニで何を買ったらいいか?

外食で何を食べたらいいか?

など聞かれることが多いのですが、

実際に商品を見ないと判断できませんし、正直食べてはいけないものは無いので、

適正範囲内であれば何を食べても大丈夫です。

ただ、その食べたいものを食べたとき、副菜でこれを追加してください。とか、

昼食にこれを食べたなら、朝食と夕食を〇〇にしてバランスを取りましょう。とお伝えしたいと考えています。

外食・中食すべてが悪いわけではないので、

わからないことは管理栄養士と相談して決めていくと良いでしょう。

まとめ

糖尿病の治療では、食事療法が重要です。

また、早めに適切に取り組むことで血糖コントロールがしやすくなります。

もし食事療法をできていない人がいたら、病院へ受診して、栄養指導を受けることを推奨します。

最後までお読みいただきありがとうございました。



参考

糖尿病診療ガイドライン2024・3章 食事療法(日本糖尿病学会)

早坂朋恵,「病態別栄養療法まるわかりガイド 病態生理・診断・治療・食事療法・栄養指導のポイント」内,林高則.窪田直人,”2型糖尿病”,メディカ出版,2021年5月,10~18ページ

日本糖尿病学会「糖尿病食事療法のための食品交換表第7版」,文光堂,2021年2月,6ページ

細井雅之,「激アツ!糖尿病教室ハイパースライド オンラインでも使えるスライド165点&台本」内,岡村春奈.藤本浩毅”これから食事療法を始める人のためのハイパースライド”メディカ出版,2023年6月,152~153ページ

細井雅之,「激アツ!糖尿病教室ハイパースライド オンラインでも使えるスライド165点&台本」内,杉本真一.蔵本真”食事療法を無理なく続けてもらうためのハイパースライド”メディカ出版,2023年6月,164ページ