「脂質ってどんな働きをしているんだろう?」
「脂質は1日にどのくらい摂ればいいんだろう?」
などのお悩みはありませんか?
この記事では、脂質の働きや摂取量、たんぱく質を多く含む食品などについて説明します。
目次
脂質とは
脂質とは、水に溶けにくく、有機溶媒に溶けやすい物質です。
体内では、エネルギー源や細胞膜の構成成分などに関与する栄養素です。
脂質はエネルギー産生栄養素(三大栄養素)の一つで、
1g当たり 9kcal のエネルギーを持ちます。
脂質を構成している重要な要素が「脂肪酸」です。
脂肪酸は、構造の違い(炭素数)により短鎖脂肪酸・中鎖脂肪酸・長鎖脂肪酸に分けられます。
長鎖脂肪酸は、二重結合の有無やその位置、個数などによって、飽和脂肪酸・一価不飽和脂肪酸・多価不飽和脂肪酸・n-6系脂肪酸・n-3系脂肪酸に分けられます。
ほとんどの脂肪酸は体内で作ることができますが、
体内で作れないか、作れても必要量を満たすことができないため食事から摂取する必要がある脂肪酸もあり、それを必須脂肪酸と言います。
主に必須脂肪酸と呼ばれているものは、リノール酸・リノレン酸・アラキドン酸です。
(その他にも、必須脂肪酸からしか作ることができないDHA・EPAなども必須脂肪酸とされています。)
必須脂肪酸は、n-6・n-3系脂肪酸に属しているため、この2つの脂肪酸は良質な脂質とされています。
これらの脂肪酸とグリセロールなどが結合して、
トリアシルグリセロール(中性脂肪)やLDLコレステロール、HDLコレステロールとなり、体内での役割を果たしています。
脂質の役割
エネルギー源
エネルギー産生栄養素(たんぱく質・脂質・炭水化物)のなかで、
たんぱく質・炭水化物は1g当たり4kcalですが、
脂質は1g当たり9kcalと産生エネルギー量がかなり多いことが特徴です。
また、炭水化物は肝臓や筋肉に貯蔵されるため、少量しか蓄えられないですが、
脂質は脂肪として様々なところに貯蔵されるため、多くのエネルギーを蓄えておくことができます。
(蓄えすぎると、肥満になります。)
体温の保持
皮下に脂肪を蓄積することにより、熱が体外に放出するのを防ぎ、また、外部からの熱が入るのも防いで体温を保持しています。
しかし、肥満体型になると大変なようで、
マツコ・デラックスさんが、月曜から夜更かし(日本テレビ系)にてエアコンの温度について語る場面があり、
「夏は冷やしといたほうが良い、寒い人は着ればいい。冬は逆、暖めすぎないほうがいい、寒い人は着ればいい」
と発言しています。
これに関して、ミッツ・マングローブさんが、5時に夢中(TOKYO MX)にて、
「(マツコは)冬場も冷房入れるでしょ。その昔は毎日、楽屋が一緒でしたから。入ると、ビビビビビッって16度にするんですよ。赤ワインの適温よね」
と話していました。
脂質には「体温保持」という重要な機能がありますが、蓄えすぎると赤ワインとして生活することになるので注意しましょう。
細胞膜の構成
脂質はたんぱく質とともに細胞膜を構成しています。
細胞膜が無ければ人は形を維持できないので、人が存在するうえで重要な役割です。
腹持ちが良い
体内での役割ではないですが、食品中の脂質は腹持ちが良いという特徴があります。
脂質が胃に入ると、胃の消化活動がゆるやかになり、胃液の分泌が少なくなります。
そのため、食物の胃内停滞時間が長くなり、長時間空腹を感じさせなくなります。
逆に言うと、胃の働きの低下につながり、食べすぎると胃に負担をかけることになり胃もたれなどを生じる可能性があるため、食べすぎは良くないです。
食事を美味しくする
こちらも体内での役割ではないですが、「油」「脂」により食事が美味しくなります。
例えば、本格派の中華料理。
管理栄養士から見ると、異常な量の油を使って調理しています。
だけど、食べるとめちゃくちゃ美味しいんです!
他にも、バターをふんだんに塗ったパンや、豚骨ラーメン、アイスクリームなど、脂質しっかり入っていると美味しく感じます。
少し話が逸れますが、
健康的な食生活とは、様々なことを制限するのではなく、食嗜好に合った生活で健康的に過ごすことが大切です。
そのためにも、「油・脂」を使った方が美味しい料理は、「油・脂」を使って食べる。
そうした日の他の食事では脂質を控えるなどして、バランスを整えるようにしましょう。
工夫次第で、食嗜好を大切にしながら健康を手に入れることができます。
その他
その他にも様々な役割があり、
・体の保護
・胆汁酸の合成
・ビタミンD3の合成
などの役割を担っています。
脂質の1日の摂取量
脂質の摂取量は、日本人の食事摂取基準2020年版において、
生活習慣病の発症予防を目的とする「目標量」が定められています。
また、脂質の一種である飽和脂肪酸・n-6系脂肪酸・n-3系脂肪酸も摂取基準が定められており、
飽和脂肪酸では「目標量」、n-6・n-3系脂肪酸では「目安量」が定められています。
脂質の目標量
飽和脂肪酸の目標量
n-6系脂肪酸の目安量
n-3系脂肪酸の目安量
まとめると…
脂質は重要な栄養素ですが、
脂質・飽和脂肪酸の過剰摂取は生活習慣病の恐れがあるので、摂りすぎないようにしましょう。
しかし、脂質のなかでも体に良い働きをするn-6・n-3系脂肪酸は意識的に摂るようにしましょう。
例えば、1日1800kcalを摂取する場合、
脂質:40~60g
その内訳として、
飽和脂肪酸:14g以下
n-6系脂肪酸:8gくらい
n-3系脂肪酸:2.1gくらい
にしましょうね。といった感じです。
脂質の過不足
脂質は多すぎても少なすぎても良くないです。
脂質を摂りすぎると
脂肪が過剰に蓄積すると、肥満になります。
脂質は1g当たり9kcalと高カロリーなため、過食により摂取エネルギー量が消費エネルギー量を上回るために肥満が生じます。
肥満は、内蔵脂肪型肥満と皮下脂肪型肥満に分けられます。
内臓脂肪型肥満では、高血圧や糖尿病などの生活習慣病になるリスクが高いため、早急に減量が必要となります。
対して皮下脂肪型肥満は、若いうちに病気になるリスクは低いですが、肥満体型が長く続くと、膝や股関節などの関節の障害が生じます。
それにより、身体活動量(消費エネルギー)が減少するため、さらに痩せにくくなるといった悪循環に入り込んでしまいます。
脂質が不足すると
一方で脂質が不足すると、細胞膜を作ることができず、血管が破れやすくなり、脳出血のリスクが高まります。
その他にも、エネルギー不足により疲れやすくなったり、抵抗力が低下するなど日々の生活に支障が生じてきます。
また、必須脂肪酸の欠乏により皮膚炎などが発症するリスクがあります。
脂質と他の栄養素の関係
脂溶性ビタミンと脂質
脂溶性ビタミン(ビタミンA・D・E・K)やβカロテンは、脂質と一緒に摂取することで吸収されやすくなります。
身近な例で言うと、生サラダなどを食べる時は、ノンオイルではなくオイル入りドレッシングを使うことで吸収率が上がります。
ビタミンB2と脂質
ビタミンB2は脂質を代謝する際に必要な補酵素です。
ビタミンB2が無いと、脂質が上手く代謝されずに、動脈硬化のリスクなどが高まることになります。
脂質を摂る際には、ビタミンもしっかり摂るようにしましょう。
脂質を多く含む食品
脂質は、油脂類・種実類・肉・魚などに多く含まれます。
日常的に使用される食品のなかで、脂質が多い食品をまとめてみました。
油脂類
サラダ油 | 97.2g |
オリーブ油 | 98.9g |
(無発酵)有塩バター | 74.5g |
マーガリン 有塩 | 78.9g |
種実類
ごま 乾 | 53.0g |
アーモンド 乾 | 51.9g |
カシューナッツ フライ | 47.9g |
落花生 乾 | 46.4g |
肉
豚ばら | 39.0g |
豚ロース 脂身付き | 22.1g |
和牛サーロイン 皮下脂肪なし | 39.8g |
鶏もも 皮つき | 13.5g |
ベーコン | 38.1g |
ウインナー | 29.3g |
魚
たいせいようさば (ノルウェーさば) | 23.4g |
さんま 皮つき | 22.7g |
うなぎ | 16.1g |
たいせいようさけ 皮なし (アトランティックサーモン) | 15.7g |
その他
アボカド | 15.5g |
プロセスチーズ | 24.7g |
ミルクチョコレート | 32.8g |
ポテトチップス | 34.2g |
まとめ
脂質とは、水に溶けにくく、有機溶媒に溶けやすい物質です。
体内では、エネルギー源や細胞膜の構成成分などに関与する栄養素です。
1日の摂取量は、生活習慣病の発症予防を目的とする「目標量」が定められています。
脂質を摂りすぎると、肥満になるので注意しましょう。
また、脂質を摂るときは、ビタミンも一緒に摂るようにしましょう。
脂質は、油脂類や種実類、肉、魚などに多く含まれています。
参考
林淳三 「三訂 基礎栄養学」,建帛社,2016年12月,53~70ページ