高齢者は、別の疾患や服薬の影響により下痢になりやすいです。
下痢の原因を知り、対策することや、下痢になったときにどのような食事をすれば良いか知っておくことで、
体調を悪化させずに済まます。
そこで今回は、高齢者の下痢の原因や食事の注意点についてお話しします。
下痢の基礎知識
下痢とは、水様便が1日に3回以上ある状態をいいます。
また、急性(発症後2週間以内)と慢性(発症後2週間以上)に分けられます。
急性と慢性では原因が異なることが特徴です。
急性の激しい下痢によって体水分量の少ない高齢者では脱水症状に陥ることがあり、低栄養の高齢者が脱水状態になると栄養状態は急激に悪化します。
また、出血を伴う慢性的な下痢の場合は、貧血になる可能性もあるため注意が必要です。
下痢の原因
急性下痢の原因
急性下痢(2週間以内の下痢)の原因は、
食事の影響や、服薬(抗生剤や下剤)の影響、腹部の冷え、ストレス、感染性胃腸炎などが考えられます。
慢性下痢の原因
慢性下痢(2週間以上の下痢)の原因は、
大腸がんや過敏性腸症候群などの消化器系疾患、甲状腺機能亢進症や糖尿病などの全身疾患が影響していると考えられます。
食事の注意点
腸管の炎症や器質的な原因によって下痢が起こっている場合は、絶食管理が適切な場合もありますが、
今回は食事を取る際の注意点についてお話しします。
消化の悪い食材は避ける
腸に負担をかけないようにするために、食物繊維や脂質の多い食材は避けるようにしましょう。
具体的には、ごぼうや海藻類、キノコ類、油、洋菓子などです。
刺激のある食材は避ける
言わずもがなですが、刺激のある食品は控えましょう。
具体的には、キムチ、こしょう、にんにく、しょうがなどです。
また、冷たい水なども刺激につながりますので、水を飲むときは温めて飲む方が良いです。
適切な水分補給
下痢のときは、便と一緒に水分も排出するため、脱水になる可能性があります。しっかりと水分を摂取しましょう。
ただし、水分の摂りすぎも下痢につながります。
水分摂取量は、体重×30mlを目安に1200~2000mlの範囲内が良いです。
低FODMAP食
慢性下痢(過敏性腸症候群など)の場合は、発酵性の糖質摂取を減らした「低FODMAP食」にするという選択肢もあります。
FODMAPとは「Fermentable、Oligo saccharides、Di saccharides、Mono saccharides、And、Polyols」の頭文字を取ったもので、それぞれ「発酵性(F)、オリゴ糖(O)、二糖類(D)、単糖類(M) And 糖アルコール(P)」を表しています。
高FODMAPの食品例には、
パン、さつまいも、納豆、玉ねぎ、リンゴ、ソーセージ、牛乳などがあります。
対して低FODMAPの食品例には、
ご飯、じゃがいも、木綿豆腐、トマト、いちご、卵、コーヒーなどがあります。
低FODMAP食については、別の記事で詳しくまとめていますので興味のある方は以下リンクを参照ください。
低FODMAP食とは?食品一覧とともに紹介【管理栄養士】栄養補助食品の活用
消化が良く、刺激もなく、水分も摂れるのが栄養補助食品です。
ドラッグストアなどに売っているメイバランスや、アイソカルなどの栄養補助食品は病気のときほどおすすめです。
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まとめ
下痢には2週間以内の急性下痢と、2週間以上の慢性下痢がありますが、
急性下痢の場合は、体水分量の少ない高齢者では脱水状態になりやすくなるため注意が必要です。
急性下痢の原因は、食事の影響や、服薬(抗生剤や下剤)の影響、腹部の冷え、ストレスなどが、
慢性下痢の原因は、消化器系疾患や糖尿病などの全身疾患が影響していると考えられます。
下痢のときの食事では、
消化の悪い食材は避ける、刺激のある食材は避ける、適切な水分補給、低FODMAP食(慢性下痢)、栄養補助食品の活用
などに意識した食生活が良いでしょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
参考
八島妙子. ”老年看護ぜんぶガイド”.株式会社照林社,2022年6月,58~59ページ
小西敏郎,森本修三,小城明子. ”見てできる栄養ケア・マネジメント図鑑 栄養管理ビジュアルガイド”.株式会社学研メディカル秀潤社,2018年9月,38~39ページ
田村佳奈美. ”病院・介護保険施設・在宅で活用できる 高齢者の栄養ケアポイントBOOK”.株式会社メディカ出版,2024年5月,114ページ
過敏性腸症候群(IBS)の改善に低FODMAP食の進め方(田辺三菱製薬)
↑その他にも、アセスメントや症状・疾患別の基本情報、老年看護技術について詳しく書かれています。
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