「咀嚼・嚥下・誤嚥について教えて欲しいです」
「嚥下に問題があるかのチェックがしたいです」
「母が誤嚥してしまうんですが、どうしたらいいですか?」
などのお悩みはありませんか?
この記事では、咀嚼・嚥下・誤嚥について、嚥下に関するチェック、食形態や嚥下運動などについてお話しします。
目次
咀嚼・嚥下・誤嚥とは
咀嚼とは、食べ物をかみ砕くことで、嚥下とは、それを飲み込むことをいいます。
咀嚼や嚥下などが上手くできなくなったために起こることを摂食嚥下障害といい、その一つに誤嚥があります。
誤嚥とは、本来は食道を通って胃の中に入らなければならないものが、誤って気管内に入ることです。
咀嚼不良の原因
咀嚼不良の原因には以下のようなものがあります。
・歯の欠損
・義歯の不具合
・あごの筋力の低下
咀嚼が上手くいかないと、食べ物を塊にできずに(食塊ができずに)誤嚥の原因となってしまいます。
嚥下不良の原因
嚥下不良の原因には以下のようなものがあります。
・舌の可動域や筋力の低下
・咽頭、喉頭など、喉の筋力の低下
・嚥下反射の低下
嚥下が上手くいかないと、高確率で誤嚥してしまいます。
誤嚥
誤嚥には、
咳(むせ込み)をして、食べ物を戻すことができる誤嚥と、
反射能力が低下していて、咳(むせ込み)が起こらない誤嚥の2種類があります。
咳(むせ込み)がある誤嚥は気づくことができるため、食形態や姿勢などで改善できますが、
咳(むせ込み)がない誤嚥は気づきにくいため、重度の肺炎になって初めて発覚することがあります。
チェックポイント
誤嚥に問題があるかのチェックをしていきましょう。
各項目について、当てはまるものにチェックをしてみてください。
歯
▢ 自分の歯で食べる
▢ 義歯で食べる
▢ 歯茎で食べる
▢ 歯が折れている
▢ 歯茎に炎症がある
咀嚼力
▢ 良好
▢ 柔らかいものを好む
▢ 口の中に長時間ある
▢ 噛まずに飲み込む
▢ 咀嚼する動作が無い
舌の状態
▢ 清潔
▢ 舌が乾燥している
▢ 舌がザラザラ
▢ 舌苔がある
▢ 舌に痛みがある
姿勢
▢ 背もたれ無しで座位可能
▢ 背のみ支え・車いす
▢ 背・頭部の支えが必要
▢ 車いすよりずり落ちてしまう
▢ 姿勢を保てない
口腔残渣(口の中に食べ物が残る)
▢ 口腔残渣なし
▢ 口腔残渣あり
結果
どの項目においても1番上にチェックがついていた場合、
誤嚥の危険性は少ないでしょう。
口腔残渣以外の項目で2番目にチェックが付いている場合、
誤嚥の危険性は少ないですが、加齢により状態が悪化する可能性があるので、嚥下に必要な筋力トレーニングなどをして機能を維持するようにしましょう。
口腔残渣以外の項目で3番目以降にチェックが付いている場合、また、口腔残渣ありにチェックが付いている場合、
誤嚥の危険性が高いです。
嚥下に必要な筋力トレーニングや、適切な食形態の選択が必須になります。
医師・管理栄養士などに、食事について相談してみてください。
適切な食形態について
食形態とは、摂食嚥下能力に合った食事の形態のことです。
上から順に
常食 | 普通の形をした食事 |
軟食 | やや軟らかい食事で、主食形態は粥。副食形態は「マッシュ状」や「きざみ食」など |
ソフト食 (ムース食) | 常食をミキサーにかけ、ゼリー状・ムース状に固めた食事 咀嚼機能が低下していても食べる事ができる |
ミキサー食 (ペースト食) | 常食をミキサーにかけ、飲み込みやすいように粘度を調整した食事 咀嚼・嚥下機能が低下していても食べる事ができる |
「上から順に」と表現したように、食形態は「上がる(回復する)」「下がる(悪化する)」と表現されます。
食形態が合っていない食事を食べると、上手く食塊が作れずに誤嚥してしまう可能性があるため、
咀嚼・嚥下能力に合わせて食形態を選択することが大切です。
ご家庭で、むせ込みを起こしてしまう場合は、姿勢の改善などを試して改善しなかった場合に、食形態を1つずつ下げてあげてください。
ただし、下げすぎて残存機能を弱めてしまうと、エネルギー摂取量の低下などにもつながりますので、個人での判断が難しい場合は、医師・管理栄養士などに相談するようにしましょう。
嚥下体操「パタカラ体操」
パタカラ体操とは、誤嚥を防ぐための代表的な訓練方法の一つで、口・舌を鍛えることで食べる・飲み込む機能の向上を目的とします。
「パ」「タ」「カ」「ラ」の4文字を発音することで口・舌の筋肉を使い、食べたり飲み込んだりする機能を鍛える代表的な体操の一つです。
パタカラ体操のやり方と効果的に行うポイント(ライフル介護)
パタカラ体操に関しましては、私が絵を描けないため、別サイトの分かりやすい記事をご紹介します。
詳しくは引用リンク先をご覧ください。
このような体操を取り入れるなどして、筋力の維持・向上を図りましょう。
「口から食べる」ということは思っている以上に大切なことです。
宅食の活用
食べやすく柔らかい食事を作ることが難しい場合は、宅食の利用を検討してみるのも良いと思います。
また、ソフト(ムース)食を家で作るのは大変なので、宅食や通販の商品を買うほうが楽かと思います。
ここでは2つご紹介します。
「やわらかい」やわらかダイニング
「ちょっとやわらかめ」「かなりやわらかめ」の2種類は、次に紹介するベネッセの宅食より値段が安いです。
また、3段階のやわらかさから選べるため、先ほどの食形態で言うと、
ちょっとやわらかめ→常食(より少しやわらかい)
かなりやわらかい →軟食
ムースやわらか →ソフト(ムース)食
に相当します。
様々なレベルに対応できるため、気になる方は公式サイトを見てみてください。やわらかダイニング
「やわらかい」ベネッセのおうちごはん
「ムースのおかず」が、一つ前のやわらかダイニングより値段が安いです。
やわらかさ別では「バランス健康食」「冷凍やわらか食」「ムースのおかず」の3種類が販売されています。
これらを先程の食形態で表すと、
バランス健康食→常食
冷凍やわらか食→軟食
ムースのおかず→ソフト(ムース)食
に相当します。
こちらも様々なレベルに対応できるため、気になる方は公式サイトを見てみてください。
栄養補助食品の活用
咀嚼・嚥下能力が低下すると、
食事がわずらわしいと感じて、食事を嫌がってしまったり、
お粥やミキサー食を作る際に、加水することなどから、エネルギー摂取量が減少してしまい、痩せや低栄養の危険性が高まります。
食形態が低下するにつれて、栄養補助食品の活用が大切になってきます。
基本的には、咀嚼・嚥下能力が低下している人でも使える補食が多いですが、
さらさらの液体は、嚥下能力が低下している人には難しいので避けましょう。
嚥下能力が低下している場合は、飲料タイプではなくゼリータイプの栄養補助食品が無難です。
また、栄養補助食品の場合、
「舌でつぶせる」といったユニバーサルデザインの表記や、
「学会分類2021○○相当」「嚥下困難者用食品」などの表記がされているため、選ぶ際の参考にすると良いでしょう。
このサイト「補食ナビ」では栄養補助食品について詳しく説明しているので、他の記事も参考にしてみてください。
まとめ
咀嚼とは、咀嚼とは、食べ物をかみ砕くことで、嚥下とは、それを飲み込むことです。
誤嚥とは、本来は食道を通って胃の中に入らなければならないものが、誤って気管内に入ることです。
加齢により、様々な機能が衰えることで嚥下能力が低下し誤嚥になりやすくなります。
今ある機能を維持できるように、口腔体操なども取り入れてみましょう。
また、その人の嚥下能力に合った適切な食形態を選択することも大切です。
ソフト食などは家では作るのが困難なため、宅食を利用するのも一つの方法です。
また、食形態が低下するとエネルギー摂取量が減少することが多いので、そうなった場合は栄養補助食品をうまく活用するようにしましょう。
参考
渡邉早苗,寺本房子,松崎政三 「三訂 臨床栄養管理」,建帛社,2016年12月,36-38,195-197ページ