「高血圧の食事ってどうすればいいの?」
「高血圧の食事では、どんなことに気を付ければいいの?」
などのお悩みはありませんか?
この記事では、高血圧の食事療法について高血圧治療ガイドライン2019をもとにお話しします。
目次
高血圧症の食事療法
高血圧症の治療は「生活習慣の修正」と「薬物療法」が重要になってきます。
また、生活習慣の修正では「食事療法」と「運動療法」の2つが重要となります。
さらに、薬物療法は高血圧治療の段階からの選択肢ですが、
生活習慣の修正は、降圧効果が期待できるだけでなく、高血圧予防の観点からも重要です。
高血圧治療ガイドライン2019では、生活習慣の修正として
・減塩
・食事の選択
・節酒
・適正体重(BMI25未満)
・運動(軽度の有酸素運動を毎日30分、または週180分以上)
・禁煙
・ストレス管理
などが大切としています。
また、これらのうち1つだけを取り組むのではなく、複合的に取り組むことが効果的であるとしています。
この記事では、「減塩」「食事の選択」「節酒」の3つに関して、さらに詳しく説明していきます。
食塩制限(6g/日未満)
食塩の過剰摂取は血圧の上昇につながります。
対して、減塩は血圧を下げる効果があります。
6g/日未満の減塩により、心血管疾患や脳血管疾患のリスク低下が期待できることから、
減塩目標が6g/日未満と定められました。
さらに、WHO(世界保健機構)では、日本より厳しい5g/日未満を推奨しています。
和食は味噌汁や漬物など、味が濃いものが多いため、
日本人は昔から食塩摂取量が多い傾向があります。
近年は、食塩摂取量が徐々に低下しているものの、
直近の平均値を見ると、男性10.5g/日、女性9.0g/日と報告されており、依然として多いことが分かります。
また、高血圧患者の減塩意識は高いものの、必ずしも実践に繋がっていないことが多いです。
特に、「醤油やソースはかけずにつけて食べる」という減塩方法がありますが、
寿司の上から醤油をかけていたり、とんかつの上からソースをかけてしまうなど、
わかっていても「美味しさ」を優先させてしまう方が多いです。
減塩方法は1つではないため、自身が取り入れられることから、少しずつ変えていくことが大切です。
特に塩分が多いのが加工食品ですが、栄養成分表示欄に「食塩相当量」の表記がされているため、
食塩の多い食材は避けるようにするなど、できることから実践することが大切です。
詳しい減塩方法については、以下の記事をご覧ください。
【管理栄養士が教える】減塩方法・塩分の摂りすぎを防ぐコツ『16選』2024完全版野菜を積極的に摂る
野菜・果物には「カリウム」という栄養素が豊富に含まれています。
カリウムはナトリウムの血圧上昇作用に拮抗することから、降圧効果が期待できます。
そのため、カリウムを豊富に含む野菜・果物の積極的な摂取が推奨されています。
高血圧治療ガイドライン2019では、上記のように記載されていますが、
個人的には「野菜」を積極的に摂り、「果物」は適度に摂るべきであると考えます。
というのも、野菜にはカリウム以外のビタミンやミネラルも豊富に含まれていますが、
果物にはカリウム、ビタミンA・Cは豊富に含まれているものの、他のビタミン・ミネラルはそれほど多く入っていません。
さらに、果物の甘味(果糖)の過剰摂取は、中性脂肪を高め、生活習慣病の一つである脂質異常症のリスクを高めてしまいます。
「高血圧の食事療法」のみで考えれば果物の摂取は有効ですが、栄養学全体で見ると果物への依存は看過できません。
また、カリウムであれば、いも類、豆類、ナッツ類などにも含まれていることから、果物以外にも積極的に摂取すべき食材はあります。
わかりやすく「野菜・果物」でまとめられていますが、
「野菜」を積極的に摂取する方が、より安全です。
野菜の積極的な摂取を筆頭に、果物・いも・豆・ナッツなども適度に摂るようにしましょう。
カリウムが多い食材を知りたい場合は、以下の記事をご覧ください。
『カリウムの多い食材一覧』野菜と果物だけじゃない!飽和脂肪酸・コレステロールを控える
この項目の説明は、次の項目「多価不飽和脂肪酸・低脂肪乳製品を積極的に摂る」にもつながります。
高血圧の食事療法のなかでも、
野菜・果物・低脂肪乳製品が豊富で、飽和脂肪酸とコレストロールが少ないDASH食と減塩を組み合わせた「DASH食-sodiumu食」には十分なエビデンスがあるとされています。
肉やバターなどに多く含まれている「飽和脂肪酸」は摂りすぎると、肥満やLDLコレステロール・血中中性脂肪の増加につながります。
その結果、動脈硬化のリスクが高まり、血圧が上昇してしまいます。
また、コレステロールに関しても、過剰に摂取するとLDLコレステロール値の上昇につながります。
飽和脂肪酸・コレステロールともに、肉や乳製品に多く含まれています。
そのため、肉を控えて魚や大豆製品にする、低脂肪の乳製品を活用することが高血圧対策に有効となってくるため、次の項目につながります。
多価不飽和脂肪酸・低脂肪乳製品を積極的に摂る
脂質は、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の2つに分けられ、
不飽和脂肪酸の中は、一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸の2つに分けられます。
その多価不飽和脂肪酸には、LDLコレステロールや血中中性脂肪を低下させる作用があるものもあり、動脈硬化の予防につながります。
多価不飽和脂肪酸を多く含む、魚介類やナッツ類、大豆製品を摂るようにすると良いでしょう。
また、低脂肪乳製品の活用により、乳製品に含まれている余分な脂質を摂取せずに済みます。
さらに、乳製品に多く含まれているカルシウムには、血圧を安定させる働きがあるため、不足しないように摂取する必要があります。
コップ1杯の低脂肪乳など、手軽に摂り入れられることから始めてみましょう。
低脂肪乳が血圧に最適な理由、低脂肪乳を使ったレシピについて詳しく書いてある記事もあります。
興味がありましたら、ご覧ください。
お酒は少量にする
アルコールには血管を広げる作用があるため、少量の飲酒であれば血圧は一時的に低下します。
しかし、飲みすぎると逆に血圧が高くなります。
さらに、おつまみなどで塩分の摂取量も増えるため、飲酒は血圧を悪化させやすいです。
適量であれば問題ないため、飲酒習慣がある人は、節酒を心がけましょう。
さらに、飲酒制限により1~2週間のうちに降圧効果が得られることが分かっています。
お酒の適正量は、エタノールで男性20~30ml/日以下、女性はその約半分の10~20ml/日以下に制限することが勧められています。
以下に各お酒の適正量を張っておきますので、参考にしてください。
特定保健用食品(トクホ)に頼りすぎない
特定保健用食品の摂取により、その表示効果を期待することはできます。
しかし、特定保健用食品の審査で要求している有効性の確認が科学的根拠のレベルまで届いていないことなどを理由に、積極的に勧められるものではないとされています。
また、特定保健用食品を使用したとしても、それが降圧薬の代替となるものではない事を理解しておきましょう。
また、すでに降圧薬を服用している場合や他疾患による治療を受けている人は、特定保健用食品並びに健康食品を取り入れてもよいか医師に相談するようにしてください。
また、機能性表示食品については推奨しないとされています。
健康食品に頼りすぎず、食事・運動・服薬による治療を選択するようにしましょう。
まとめ
高血圧の食事療法について、高血圧治療ガイドライン2019をもとにお話ししました。
食事面では以下が重要です。
・食塩制限(6g/日未満)
・野菜を積極的に摂る
・飽和脂肪酸、コレステロールを控える
・多価不飽和脂肪酸、低脂肪乳製品を積極的に摂る
・お酒は少量にする
・特定保健用食品(トクホ)に頼りすぎない
これらのうち1つでも良いので、少しずつ実践していけるようにしましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
参考
高血圧治療ガイドライン2019,日本高血圧学会編・著(ライフサイエンス出版)