「とろみ調整食品ってなに?」
「とろみ剤の使い方や濃度は?」
などのお悩みはありませんか?
この記事では、とろみ調整食品とは、種類や使い方、濃度などについてお話しします。
とろみ調整食品とは
とろみ調整食品とは、液体にとろみをつける食品です。
使用することで誤嚥を防ぎ飲みやすくなります。
摂食嚥下障害のある方にとって、水のように粘度の低い液体は、
通過スピードが速いため飲み込みにくく、誤嚥しやすい形態です。
サラサラの水に、とろみ調整食品を混ぜることで粘度がつき、嚥下しやすくなります。
なぜとろみをつけると、嚥下しやすくなるか
嚥下反射や嚥下運動が障害されていると、喉が閉まるタイミングが遅いまたは弱いため、
動きの速い水は気管へ流れ込んでしまう可能性が高くなります。
とろみをつけることで、喉の通過スピードが遅くなり、嚥下しやすくなるのです。
しかし、粘度が高すぎると口腔内や喉に残留してしまい、誤嚥や窒息につながる危険性もあるので注意が必要です。
とろみ調整食品の種類
とろみ調整食品は、主原料によって「デンプン系」「グアーガム系」「キサンタンガム系」の3タイプに分けることができます。
デンプン系の特徴
・すばやく粘度が付くが、添加量が多く必要
・ヨーグルト状では飲みやすいが、ムース状など型抜きできるかたさになるとべたつき感が生じる
・唾液(アミラーゼ)により、粘度が低下する
・時間の経過とともに固くなる
欠点が多いため、ほとんど使われません。
- ムースアップ
グアーガム系の特徴
・添加量が少なくても粘度が付くが、粘度が安定するまでに多少時間がかかる
・とろみがつきにくい牛乳でもしっかり粘度がつく
・ダマになりやすく、べたつきを生じやすい
・グアーガムの豆臭さが多少ある
ダマになりやすい、べたつきやすいと欠点があるため、液体にはあまり使われません。
- トロミアップエース
- ハイトロミール
キサンタンガム系の特徴
現在の主流はコレです
・透明性に優れ、無臭で付着性が低い
・べたつきが少なく、添加してから粘度が安定するまでの時間が短い
・牛乳や濃厚流動食に対して粘度が付きにくいとされてきたが、現在は改良された製品が発売されている
- つるりんこQuickly
- トロメイク
- ソフティア
- とろみエール
- トロミーナ
- とろみファイン
- などなど他多数
使い方・とろみの付き方
使い方は非常に簡単です。
①お茶などに、とろみ調整食品を加える。
②ダマにならないように短時間で、すばやくかき混ぜる。
③粘度が安定するまで5分ほど待つ。
常に同じ粘度(とろみ)になるよう、液体量に対する使用量を決めておきましょう。
液体に含まれる塩分や酸性度(pH)、イオン、脂肪酸などにより粘性の付き方が異なります。
(牛乳などはとろみがつきにくいので、とろみ調整食品の入れすぎに注意してください。)
液体にとろみをつける程度なら、スプーンなどで混ぜられますが、
料理にとろみをつける(ペースト食を作る)場合は、泡だて器やミキサーなどを使った方が、ダマなく作成できます。
とろみの濃度
とろみの濃度は、学会分類2021(とろみ)によって、
「薄いとろみ」「中間のとろみ」「濃いとろみ」の3段階に統一されています。
学会分類 2021 は、概説・総論,学会分類 2021(食事)、学会分類 2021(とろみ)から成り、それぞれの分類には早見表を作成した。本表は学 会分類 2021(とろみ)の早見表である。本表を使用するにあたっては必ず「嚥下調整食学会分類 2021」の本文を熟読されたい。なお,本表中 の【 】表示は,本文中の該当箇所を指す。
粘度:コーンプレート型回転粘度計を用い、測定温度 20℃、ずり速度 50 s-1 における 1 分後の粘度測定結果【Ⅲ―5 項】。
LST 値:ラインスプレッドテスト用プラスチック測定板を用いて内径 30 mm の金属製リングに試料を 20 ml 注入し、30 秒後にリングを持ち上 げ、30 秒後に試料の広がり距離を 6 点測定し、その平均値を LST 値とする【Ⅲ―6 項】。
注 1.LST 値と粘度は完全には相関しない。そのため、特に境界値付近においては注意が必要である。
注 2.ニュートン流体では LST 値が高く出る傾向があるため注意が必要である。
注 3.10 ml のシリンジ筒を用い、粘度測定したい液体を 10 ml まで入れ、10 秒間自然落下させた後のシリンジ内の残留量である。
日本摂食嚥下リハビリテーション学会 嚥下調整食委員会:日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021.日本摂食嚥下リハビリテーション学会誌2021;25(2):144.より引用
東京大学医学部附属病院での嚥下障害患者を対象とした調査では、
63%が「薄いとろみ」が適切と評価され、35%が「中間のとろみ」、2%が「濃いとろみ」であり、
半数以上の患者がとろみの程度を高くしなくてもよいことが分かったが、1/3の患者はとろみが薄いと誤嚥する可能性があることも分かったそうです。
私が病院で働いていたときも、
「薄いとろみ」「中間のとろみ」の2つで対応しており、「濃いとろみ」は使用したことがありません。
とろみは強すぎても飲みにくいため、「濃いとろみ」ほどの粘度を液体に付けることはほとんどありません。
市販の商品の使用量
多くの種類のとろみ調整食品が各社より販売されていますが、
とろみ調整食品ごとに原材料や純度が異なるため、それぞれでとろみの付き方が変化します。
興味がありましたら、とろみ調整食品一覧についてまとめた記事についてもご覧ください。
とろみ調整食品(とろみ剤)一覧|おすすめの選び方をもとに17製品徹底比較まとめ
とろみ調整食品とは、液体にとろみをつける食品です。
使用することで誤嚥を防ぎ飲みやすくなります。
とろみ調整食品には、「デンプン系」「グアーガム系」「キサンタンガム系」の3種類がありますが、現在の主流は「キサンタンガム系」です。
キサンタンガム系はお茶などに入れて、すばやく混ぜ数分時間を置くことでとろみがつきます。
とろみの濃度には「薄いとろみ」「中間のとろみ」「濃いとろみ」の3段階に分けられていますが、基本的には「薄いとろみ」か「中間のとろみ」のどちらかで対応することが多いです。
各メーカーにより商品が出されていますが、各商品ごとに使用量が異なるため注意しましょう。
参考
上羽瑠美「見える!わかる!摂食嚥下のすべて」,学研メディカル秀潤社,2022年6月,279.283-287ページ
青山寿昭「まるごと図解 摂食嚥下ケア」,照林社,2019年9月,156-157
「第34回 とろみ調整食品」介護と栄養の食事コラム.e健康ショップ
↑その他にも、摂食嚥下に関する身体の構造などについて詳しく書かれています。
↑その他にも、ライフステージ別の摂食嚥下障害、摂食嚥下訓練などについて詳しく書いてあります。