血圧は加齢により年々高くなるため、高齢になると高血圧の状態になりやすくなります。
高血圧を改善する方法は様々ありますが、その一つが「水」です。
この記事は、「水の摂取量が血圧を改善する可能性」についてエビデンスをもとにお話しします。
水分摂取と血圧の関係
2020年に中村由美氏らによって発表された研究によると、
起床後2時間以内に550mLの水を、就寝の2時間前に550mLの水をを飲むことで、収縮期血圧の有意な低下が認められたそうです。
研究内容は、
2018年8月から12月の間に北海道で、50〜75歳の日本人57人を対象として行われたものです。
参加者はランダムに2つのグループに分けられました。
①通常の水分摂取に加えて、1日あたり550mLの水を2本飲む(介入群)
②追加の水分を飲まなかった(対照群)
割り当て因子として、「年齢」「性別「収縮期血圧」に関して、2群間に有意差はなかったそうですが、
被験者の大半は女性で、対照群は介入群よりも「体重」と「BMI」が有意に高い傾向があったそうです。
観察前の水分摂取量に大きな差は無かったが、
研究期間中は介入群の方が水分摂取量が有意に多かったようです。
また、介入群ではその他の飲料の摂取量はほとんど変化しなかったそうです。
その結果、
介入群の収縮期血圧で、0週目から12週目にかけて、123.8±20.5から117.4±15.7(mmHg)に経時的に低下しました。(図1)
拡張期血圧では有意な効果は得られなかったものの、収縮期血圧では約6.0(mmHg)も低下しました。(図2、図3)
血圧以外の嬉しい効果と考えられるメカニズム
血圧以外では、
体温の上昇(図4)、血中尿素窒素濃度低下、糸球体濾過率の低下抑制(腎機能の保護)がみられました。
中村氏らは、この研究における水分補給の主な効果として、「血圧の低下」と「体温の上昇」をあげています。
血圧低下の推定メカニズムは
・腎機能の改善による過剰なナトリウムと水分の除去
・腎臓などから分泌される血圧上昇に関与するホルモンの分泌の変化
・老廃物排泄による末梢血管抵抗の減少
であり、考えられる可能性は、老廃物が排泄されるか、血液成分が希釈され、それによって少なくとも血管抵抗が減少することであるとまとめています。
また、体温に関しては、図4にある通り対象群では体温の低下がみられたのに対し、
介入群では体温低下が抑制され、明らかに体温が上昇したことがわかります。
温熱療法は代謝や免疫機能に影響を与えることが知られているため、水分補給によって体温を維持または上昇させることができれば、代謝が高まり、免疫機能が向上する可能性があるとしています。
1日の適切な水分量
水の摂取は大切ですが、多すぎてもいけません。
多すぎると、逆に体調が悪くなってしまいます。
上記の研究では、介入群の水分摂取量の平均が1998ml/日で約2リットルでした。
また、日本人の食事摂取基準(2020)では、水の必要量(目安量)を策定するための研究が不足しており策定困難であるとして、1日の適切な水分量は策定されていません。
ではどのくらい必要かというと、
人は尿や便から1.6L、呼吸から0.9Lの合計2.5Lが排泄されており、
食事から1L、体内代謝により0.3Lの合計1.3Lが得られると仮定されており、
飲み物からの摂取目安量は、その差である約1.2Lだと考えられています。
しかし、これはあくまでも目安であり、全員が当てはまるものではなく、
スポーツをしている人や気温が高い日などは、さらに多くの水が必要になります。
以上の事を考慮すると(研究結果踏まえ)、
1日の適切な水分量は、1.2~2.0Lであると考えられます。
また、研究のような飲み方をすることで、健康効果を得られる可能性があることから、
適切な水分の摂取が健康を増進させることに期待ができると考えられます。
喉が渇いていなくても、意識して必要な水分を摂るようにしましょう。
まとめ
高血圧と水の研究については、様々な国で発表されていましたが、
日本国内での研究数は不足していましたが、今回の研究によって水を摂ることにより健康状態を促進する可能性が生じてきました。
少なくとも、血圧、体温、腎機能には良い効果がある可能性が高いことが分かりました。
これまでは、喉が渇いたときや食事のときなどに水分補給をしていましたが、
それとは別に、積極的な水分補給が大切であることが分かりました。
今回の研究のように、朝と夜にも水を飲む習慣を作ることから始めてもみようと思います。
皆様も、ぜひ適量の水分補給を心がけてみてはいかがでしょうか。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
参考