「ときどき、DHA・EPA配合と書かれているものがありますが、DHA・EPAとは何ですか?」
「DHA・EPAは摂ったほうが良いですか?」
「DHA・EPAが入っている栄養補助食品を教えてください」
などのお悩みはありませんか?
この記事では、DHA・EPAの効果や摂取についてのポイント、DHA・EPAが摂れる栄養補助食品などについてお話します。
目次
DHA・EPAとは
DHA・EPAとは、「Docosahexaenoic acid(ドコサヘンサエン酸)」「Eicosapentaenoic acid(エイコサペンタエン酸)」の略で、体の中でほとんど生成することができない必須脂肪酸の一種です。
魚に多く含まれていることから「魚油」と呼ばれることもある脂肪酸です。
脂肪酸とは脂質を構成する成分で、構造の違い(炭素数)により、
「短鎖脂肪酸」「中鎖脂肪酸」「長鎖脂肪酸」の3つに分けられます。
さらに長鎖脂肪酸では、二重結合の有無により、
「飽和脂肪酸」「一価不飽和脂肪酸」「多価不飽和脂肪酸」の3つに分けられます。
さらに多価不飽和脂肪酸では、二重結合の位置によって、
「n-3系」「n-6系」の2つに分けられます。
そしてn-3系脂肪酸の中には、
「DHA」「EPA」「DPA」「α-リノレン酸」の4つがあります。
DHA・EPA・DPAは魚由来の油で、α-リノレン酸は植物由来の油です。
「あぶら」には、常温で個体の「脂」と常温で液体の「油」がありますが、
常温で個体の脂(飽和脂肪酸など)は摂りすぎると、血管内壁で固まりやすくなり動脈硬化・生活習慣病が進む恐れがあります。
一方で、DHA・EPAなどのn-3系脂肪酸は常温で液体であり、血栓をできにくくするなどの作用があることから、動脈硬化・生活習慣病対策に有用とされています。
DHA・EPAは1900年代後半以降に様々な研究により、その健康効果が期待され始めました。
また、近年ではDPAの研究も進んでおり、EPA以上の効果を期待できる可能性があるとして期待がされています。
期待される効果
EPAは肝臓で中性脂肪が作られることを抑える効果や、中性脂肪の分解を亢進することで、血清中性脂肪値が減少するとされています。
DHAはLDL(悪玉)コレステロールを減少させ、HDL(善玉)コレステロールを上昇させるとされています。
また、肝臓におけるコレステロール合成を抑制することで、血清コレステロール値を減少するとされています。
DHAには記憶力向上、学習能力向上作用もあるとされています。
脳には、血液脳関門というところがあるのですが、DHAのみが通過することができ、記憶や学習能力にかかわる脳の海馬にDHAが多く存在しています。
その、海馬のDHAの量が頭の良さに関わっていると言われています。
DHA・EPAは、網膜の黄斑の機能にも関わっています。
60歳以上で加齢黄斑変性という、加齢により黄斑の機能が低下し、視力が低下する疾患が起きやすくなります。
DHA・EPAを含むn-3系脂肪酸の摂取により、加齢黄斑変性のリスクを低減させることが確認されています。
DHA・EPAには抗炎症作用があるとされています。
腫れ・発熱・痛みなどの急性炎症や、過度の運動による関節の炎症・胃酸の逆流による食道炎などの慢性炎症を鎮める効果を期待できます。
その他にも、
「アレルギーを抑制する効果」
「精神を安定させる効果」
などが期待できるとされています。
DHA・EPAを多く含む食品は「魚」
DHA・EPAを多く含む食品は「魚」です。
少なからず含んでいる食品は「魚介類」と「卵」です。
それ以外の食品にはほとんど含まれていません。
魚の中でも、特に青魚に多く含まれていますが、ここでは食品100g当たりDHA・EPA合わせて2000mg以上含有している魚を抽出してみました。(市場に出回っているもの、生魚の値)
「たいせいようさば」は別名「ノルウェーさば」とも呼ばれます。
日本の末端市場で販売されているサバの約7割がノルウェー産といわれています(2017年 NSC聞き取り調査)。
タイセイヨウサバ(サバペディア)より
水煮3900mg
焼き3600mg
と火入れをしても高容量含まれていることが分かります。
さんまはほぼ秋にしか出回っていませんが、高容量含まれています。
焼き3300mg
とこちらも火入れをしても高容量含まれています。
焼き2900mg
とこちらも火入れをしても高容量含まれています。
また、ぶりは出世魚で、80㎝を超えたものが「ぶり」と呼ばれます。
ぶりになる前の60~80㎝の大きさのものを「はまち」と呼ばれます。
はまちは
生1360mg
焼き1220mg
とぶりに比べるとやや劣るので、DHA・EPAをたくさん摂りたい場合は「ぶり」が良いでしょう。
たちうおは生の値のみしか掲載されていませんでした。
たちうおの香草焼きなど、焼き魚としても親しまれている魚ですので、焼きの成分値が乗ることに期待しましょう。
その他にも、
うなぎ養殖1680mg
まさば1660mg
まいわし1650mg
にしん1650mg
などの魚に多く含まれていました。
DHA・EPAを摂るときのポイント
DHA・EPAなどのn-3系脂肪酸の目安量は、65~74歳時点において以下の通りとなっています。
男性2200mg
女性2000mg
n-3系脂肪酸は、魚油、亜麻仁油、えごま油、くるみなどに多く含まれています。
魚油(DHA・EPA)のみで2000~2200mg摂る必要はありませんが、
魚油(DHA・EPA)無しではほぼ到達不可能な値になっています。
(その他の方法で取るにしても、亜麻仁油やえごま油などは高価で現実的に使いにくいこと、くるみは食べすぎによる脂質の過剰摂取に注意する必要があり使いにくいため)
DHA・EPAは脂質ですので、食後すぐに体から排出されるようなことはありません。
毎日2000mgほど摂るというよりは、1週間で14000mgほど摂るイメージが良いでしょう。
そう考えると、1週間に4~6回ほど魚を食べると超えられそうに思います。
DHA・EPAは体内で合成できないため、食事から摂取する必要があります。
しかし、魚(ほか魚介類・卵)にしか入ってない栄養素のため、毎日食事として摂取することが難しい栄養素です。
そのため、DHA・EPAの効果を期待したい場合は、健康食品(特にサプリメント)から摂取する場合が多いです。
継続しやすい健康食品を見つけることが大切です。
しかし↓
DHA・EPA配合の健康食品を摂っているからと言っても、先ほど記載した効果を得られるかどうかと言ったら、話は別です。
安い商品はDHA・EPA含有量が少なかったり、
DHA・EPAの質が悪く、効果を十分に得られないものもあります。
また、12週間ほど継続して摂ってみて、初めて効果が表れるかと思います。
しっかり継続したうえで、ご自身に合うかどうか検討することが大切です。
DHA・EPAは熱に弱いとされています。
熱に弱く、加熱することにより油が酸化してしまい、油の質が低下してしまったり、油が食材の外に流れ出てしまうとされています。
そのため、生魚を食べるのがいいとされています。
ただ、先ほど食材ごとのDHA・EPAを記載した際に、「生」「焼き」「水煮」での値に大きな変化はありませんでした。
熱に弱いことは事実ですが、加熱しても極端に減るわけではないので、焼き魚・煮魚など料理を楽しみつつ、魚を取り入れることが一番大切だと思います。
DHA・EPAが手軽に摂れるおすすめの栄養補助食品
DHA・EPAが830mg含まれています。
その他の特徴として、
たんぱく質が豊富
BCAAが2500mg含まれている
カルニチンが配合
というようなことが上げられます。
このことから、
運動・リハビリを行う方で、関節などに痛みを生じる方への抗炎症作用を期待した補食と考えられます。
上記例に厳密に当てはまらなくても、
運動・リハビリ前の栄養補給
DHA・EPAの補給
低栄養対策
などに使用することができると考えられます。
メーカー | クリニコ | 内容量(g) | 54 |
用途 | エネルギー・ たんぱく質補給 | エネルギー(kcal) | 100 |
DHA・EPA(mg) | 830 | たんぱく質(g) | 10.0 |
アレルゲン | 乳 大豆 | 脂質(g) | 4.0 |
PFC比 | 40:36:24 | 炭水化物(g) | 6.0 |
味の種類 | 2種類 | 食塩相当量(g) | 0.25 |
備考 | BCAA2500mg カルニチン配合 一部ミネラル配合 | 水分量(g) | 33.2 |
DHA・EPAが150mg含まれています。
DHA・EPAの量自体は少ないですが、それらの大本である「n-3系脂肪酸」を1000mg配合しているため、健康効果には期待ができます。
また、豆乳ベースであり乳成分が含まれていない点が魅力です。
基本的には、エネルギー補給目的で使うことが第一選択として考えられます。
それに付随して、n-3系脂肪酸の効果を得たい健康意識の高い方におすすめです。
メーカー | ニュートリー | 内容量(ml) | 125 |
用途 | エネルギー・ たんぱく質補給 | エネルギー(kcal) | 200 |
DHA・EPA(mg) | 150 | たんぱく質(g) | 8.0 |
アレルゲン | 大豆 | 脂質(g) | 7.5 |
PFC比 | 16:34:50 | 炭水化物(g) | 27.2 |
味の種類 | 4種類 | 食塩相当量(g) | 0.7 |
備考 | ビタミン・ ミネラル配合 n-3系脂肪酸1000mg (α-リノレン酸 を多く含む) | 水分量(g) | 93 |
DHA・EPAが100mg含まれています。
正直言って、DHA・EPA補給目的の商品ではありません。(量が少なすぎます。)
この商品の特徴は、
食物繊維が高容量含まれていること
脂質の約半分がMCTであること
ラクチュロース、乳酸菌が配合されていること
以上の事から、
糖質の摂取量に配慮して、血糖値の乱れを少なくしたい場合。
もしくは、
腸内環境を良好にしたい場合。
などに適している商品です。
メーカー | クリニコ | 内容量(ml) | 125 |
用途 | エネルギー・ たんぱく質・ 食物繊維補給 | エネルギー(kcal) | 200 |
DHA・EPA(mg) | 100 | たんぱく質(g) | 7.5 |
アレルゲン | 乳 大豆 | 脂質(g) | 8.9 |
PFC比 | 15:40:45 | 炭水化物(g) | 27.1 |
味の種類 | 2種類 | 食塩相当量(g) | 0.28 |
備考 | 食物繊維6.0g ビタミン・ ミネラル配合 MCT4.1g ラクチュロース配合 カルニチン配合 シールド乳酸菌配合 | 水分量(g) | 93 |
DHA・EPAが配合された栄養補助食品を紹介しましたが、「小さなEプリン」以外の栄養補助食品では十分な量摂ることができないので、
しっかりと摂りたい場合はサプリメントの使用をおすすめします。
まとめ
DHA・EPAとは、「Docosahexaenoic acid(ドコサヘンサエン酸)」「Eicosapentaenoic acid(エイコサペンタエン酸)」の略で、体の中でほとんど生成することができない必須脂肪酸の一種で、魚に多く含まれていることから「魚油」と呼ばれることもある脂肪酸です。
n-3系脂肪酸の一種でもあり、中性脂肪低減効果やコレステロール低減効果などを始めとした、様々な健康効果が期待できる栄養素です。
主に魚にしか高容量含まれていないため、しっかり意識しないと目安量摂ることが難しいです。
また、熱に弱いため、焼き魚などではなく生魚の状態で食べた方が良いなど、条件が複雑なことからサプリメントとしての摂取が多い栄養素です。
そんなDHA・EPAが入っている栄養補助食品もご紹介しました。
医師・栄養士の指導を受けている方は、指導に基づいて使用されることを推奨します。
また、栄養補助食品の多量摂取により、健康が増進するものではありません。
食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、バランスの良い食事を心がけましょう。
参考
林淳三 「三訂 基礎栄養学」,建帛社,2016年12月,55~57,66~67ページ