こんにちは。
フリーランスの管理栄養士をしています、栄養課長と申します。
この記事では、高齢者用・病者用などの目的で売られている栄養補助食品とは、どのようなものなのかを説明していきます。
高齢者や病者などで、通常の食事だけでは必要な栄養素を摂れない場合に、
栄養素の摂取を補助する目的で使用される食品です。
例えば高齢者では、
食欲低下、口腔状況の悪化、嚥下困難などが原因となり、
食欲が低下してしまうことがあります。
また病者では、
風邪による体力・食欲の低下、喉が痛くて固形物が食べられない、
食物アレルギーがあるなどにより、
十分に食事を摂取できずに体重が減少してしまう方などがいます。
そのような方々に、体重低下や栄養状態が悪化しないよう、
通常の食事にプラスする補助食として使用されるのが栄養補助食品です。
以前(平成12年頃)は、
栄養成分を補給し、または特別の保健の用途に資するものとして販売の用に供する食品のうち、錠剤、カプセル等通常の食品の形態でないものと一応、定義されていましたが、現在は、国が制度化、定義しているものではないです。※1
栄養補助食品には目的ごとに様々な商品が販売されています。
各目的ごとに見ていきましょう。
栄養補助食品の多くがエネルギー補給を目的として作られています。
体重維持・増加目的や低栄養の方に使用されることが多いです。
多くの病院・施設が採用しているであろう「メイバランス」
明治メイバランスは特別用途食品の
【病者用食品(許可基準型)総合栄養食品】として、
「明治メイバランス」は、食事として摂取すべき栄養素がバランスよく含まれている総合栄養食品です。通常の食事で十分な栄養を摂ることができない方や低栄養の方の栄養補給に適しています。※2
と、表示することが消費者庁に許可された食品で、信頼性があります。
体重の維持・増加を期待する方や低栄養の方におすすめしたい商品です。
(ネスレ公式ホームページより画像引用)
ネスレのアイソカルゼリーは累計販売数1億個越えの人気商品です。
アイソカル ゼリー ハイカロリーは特別用途食品の
【えん下困難者用食品】として、
本品は、誤嚥防止を目的としたえん下困難者に適した食品です。※2
と、表示することが消費者庁に許可された食品で、
嚥下機能に不安がある方に、おすすめしたい商品です。
ゼリータイプの商品の他に、ブリックタイプの商品もあるので、用途に合わせて使い分けができるところも魅力的です。
他の栄養補助食品と比べると、たんぱく質の比率が多かったり、
アミノ酸などが入っているものなどがあります。
主にリハビリをする方や低栄養の方などで使用されることが多いです。
たんぱく質、アミノ酸(BCAA)などが多く入っている商品です。
リハビリなどで体を動かした後に飲む想定で作られており、水分も同時に摂れる点が魅力的です。
こちらはたんぱく質が豊富に含まれている栄養補助食品ですが、
主な使用目的は次の項目をご覧ください。
美容に関心のある方やビタミン・ミネラルの摂取がより多く必要な場合に使用されることが多いです。
たんぱく質・ビタミン・ミネラルが多く配合されている商品です。
このシリーズの中でも、
ブイ・クレスCP10(シーピーテン)ミックスフルーツは特別用途食品の
【病者用食品(個別評価型)】として、
本品は褥瘡を有する方の食事療法として使用できる食品です。※2
と、表示することが消費者庁に許可された食品で、褥瘡の食事療法に使用できる補食です。
ただし、ビタミンK、マンガン、銅、クロム、ヨウ素、モリブデンは入っていません。ご注意ください。
食物繊維、オリゴ糖、シールド乳酸菌などが入っているため、整腸作用が期待できます。
また、栄養機能食品として「鉄」の表記がされているため、鉄を摂りたい方におすすめです。
ただし、ヨウ素、モリブデン、ビタミンK、ビオチンは入っていません。ご注意ください。
主に高齢者などで、のどの渇きを感じにくくなっている人や、さらさらの水が飲みにくい方などで使用されることが多いです。
水・電解質の維持や補給に適した商品です。
オーエスワン(OS-1)は特別用途食品の
【病者用食品(個別評価型)】として、
特別用途食品 個別評価型病者用食品
オーエスワンは、脱水症のための食事療法(経口補水療法)に用いる経口補水液です。
軽度から中等度の脱水症における水・電解質の補給、維持に適した病者用食品です。下記の状態等を原因とした脱水症の悪化防止・回復、脱水症の回復後も下記の状態等における水・電解質の補給、維持にご利用ください。
・感染性腸炎、感冒による下痢・ 嘔吐・発熱
・高齢者の経口摂取不足
・過度の発汗
また、脱水を伴う熱中症にもご利用ください。※2
と、表示することが消費者庁に許可された食品で、
脱水症の食事療法に使用できる補食です。
レモン風味・リンゴ風味などの風味付けがされている水分補給に適したゼリー飲料です。
水やOS-1などの味付けが好きではない方や、さらさらの液体が苦手な方などにおすすめしたい商品です。
透析をされている方は、たんぱく質、カリウム、リン、食塩(ナトリウム)、水分などの栄養素が制限されます。
透析者用に、特定の栄養素量が調整されている栄養補助食品です。
たんぱく質調整、リン、カリウム調整がされている透析者向けの、
エネルギー補給を目的とした商品です。
このほかにも栄養補助食品は多数あります。
エンジョイ、クリミール、へパス、ハイプチ、エプリッチなどなど…
栄養補助食品はあくまで「補助」食品です。
そのため、1食のメインにするのではなく、
以下のようなタイミングでの摂取をおすすめします。
普段の食事はしっかり食べているが、栄養状態が改善しない方、体重が増加しない方
アレルギーなどで食の偏りがある方
など、普段の食事にプラスして取り入れてみましょう。
普段の食事は量が多くて食べられない方
病気により食事の制限があるけどおやつを食べたい方(医者、栄養士と要相談)
など、おやつの時間を工夫して取り入れてみましょう。
忙しくて食事の時間がない方
体調が悪くて食欲がない方
など、本来は1食のメインにするのは良くないですが、
食べないよりは食べた方がいいので、必要に応じて取り入れましょう。
栄養補助食品は様々な栄養素が付加されているからこそ、慎重に取り入れる必要があります。
商品例のように栄養補助食品は、
ブリックタイプの飲料や、カップに入ったゼリーなどが多いです。
そのため、食べたいときに手軽に食べられることが大きなメリットです。
体力が少ない方や、時間が無くて忙しい方でも取り入れることができます。
栄養補助食品は介護食としても使われています。
摂食嚥下機能の低下している方でも、その方に合った栄養補助食品があります。
栄養補助食品を使って、体力を回復させようとしているのに、
誤嚥により状態が悪化してしまったら意味が無いですからね。
普通のゼリーや飲み物などは賞味期限(消費期限)が早いものもありますが、
栄養補助食品は数か月~数年ほどの期限がある物が多いため、長期保存がききます。
そのため、家に保管しておいて、食べたいときに食べることができます。
食欲が低下している高齢者などに最適です。
また、震災時用などに置いておくのも良いですね。
(災害食ほどの期限はありませんが…)
栄養補助食品は、高エネルギーの物や高ビタミン・ミネラルの物などが多いです。
飲みすぎや食べすぎによって、逆に体調が悪化してしまったり、
糖尿病などの生活習慣病のリスクが増えてしまう可能性があります。
多くても1日3回までにしましょう。
食べてみれば分かりますが、味が独特です。
もちろん美味しいものもありますが、美味しくないものもあります。
また、高齢者は味覚機能が低下しているため、さらに美味しくないと感じる方も多いと思います。
高齢の親御さんなどを支える方は、親御さんへ食事の大切さを伝えることも大事になります。
また、自分用に買う方は、食事の大切さ・栄養のすごさを知ることで我慢してでも食べようとなるのではないでしょうか。
病院で管理栄養士をしているときも、患者様から
「甘くない補食は無いんですか?」とか、
「メイバランスminiの中で、一番甘くないものはどれですか?」
(ちなみに、職場の栄養科満場一致でコンポタ味)
など、甘くて食べたくないとおっしゃる方もいます。
ただ、甘くない栄養補助食品も少しはあります。
例えば、「和風香る茶わん蒸し(クリニコ)」は甘くないですし、まあまあ美味しいです。
栄養補助食品は全員が必要とするものではないため、あまり見かけることがありません。
ではどこで買えるのでしょうか?
ほんの一部の栄養補助食品ならドラックストアに売っています。
私の近くのドラックストア(ダイレックス)には、
メイバランスmini、OS-1が売っていました。
公式サイトやAmazon・楽天などのECサイトで販売されています。
(公式オンラインショップが無いところもあります。)
栄養補助食品とは、通常の食事だけでは必要な栄養素を摂れない場合に、
栄養素の摂取を補助する目的で使用される食品です。
様々な種類があり、その方に適している栄養補助食品があります。
この補食ナビでも、様々な視点で記事を書いていきますので、補食選びの際には他の記事も参考にしてみてください。
栄養補助食品はあくまでも「補食」ですので、
食べすぎないようにしてください。
医師・栄養士の指導を受けている方は、指導に基づいて使用されることを推奨します。
また、栄養補助食品の多量摂取により、健康が増進するものではありません。
食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、バランスの良い食事を心がけましょう。
参考
※1「健康食品による健康被害の未然防止と拡大防止に向けて(厚生労働省、日本医師会、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所)」