「酒は百薬の長」ともいいますが、それは適量であって初めていえることです。
アルコールの摂りすぎは肝臓を悪くする原因にもなりますので、適量の飲酒が大切になります。
この記事では、肝臓とアルコールの関係についてお話しします。ぜひご覧ください。
目次
肝臓の役割
肝臓には大きく3つの役割があります。
①解毒
肝臓は体内に入った有害物質を無毒化するフィルターのような役割があります。
例えば、「アルコール」や「薬」などの有害物質を分解し、体に悪影響が出ないように無毒化します。
また、代謝過程で生じたものも無毒化します。
例えば、タンパク質から作られたアンモニアを尿素に変えて無毒化し、尿と一緒に体外へ排出させます。
②代謝
肝臓は栄養素を体内で使える形に作り替えます。
タンパク質、脂質、糖質などの栄養素は、肝臓で加工され、血液を通して全身に送られます。
そして使われなかった栄養素は、中性脂肪などに変換され肝臓に貯蔵されます。
③免疫
肝臓は消化管から入ってきた大量の異物から身を守る免疫細胞が多量に存在しています。
細菌やウイルスをやっつけるマクロファージの80%が肝臓に存在しています。
消化管から侵入した異物だけでなく、気管から侵入し血中に入った異物も対処してくれます。
そのため、肝臓の機能が低下すると、感染に弱くなってしまいます。
肝臓とアルコールの関係
上記のような役割のある肝臓ですが、
アルコールと深い関係があり、不適切な酒生活を送っていると肝臓を悪くしてしまう原因になります。
アルコールにより肝臓に脂肪が蓄積する
アルコールは肝臓で「アセトアルデヒド」という物質に分解されます。
アセトアルデヒドは毒性が強く、肝細胞を傷つけ、さらには脂肪の分解を抑制し、肝臓に中性脂肪の蓄積を促します。
つまり、アルコールは脂肪をエネルギー源として使う機能を低下させて、
脂肪をため込む機能を高めてしまうのです。
中でも、酒のつまみに肉や揚げ物、締めに炭水化物をしっかり食べる方は、それらが脂肪として蓄積されやすくなるので注意しましょう。
アルコールが肝臓疾患のリスクになる
アルコールの多量摂取により肝臓が悪くなると、以下のような疾患になるリスクとなります。
・アルコール性脂肪肝
(脂肪肝とは、肝臓に脂肪がたまった状態のことです。症状がほとんどなく気付きにくいです。)
↓
・アルコール性肝炎
(肝炎とは、肝臓が炎症を起こしている状態です。食欲不振や倦怠感、発熱などがみられます。)
↓
・アルコール性肝硬変
(肝臓の細胞の破壊と再生が繰り返されたことで機能を失う状態のことです。ひどくなると吐血や昏睡状態に陥ることもあります。)
アルコールの摂取により、脂肪が蓄積され(脂肪肝)、肝臓が傷つき(肝炎)、それを治そうとして肝臓が硬くなってしまいます(肝硬変)。
アルコールは少量高カロリー
アルコールによる肝臓への悪影響は、アセトアルデヒドによるものだけではありません。
お酒の飲みすぎで肥満になる
アルコールは1g当たり7kcalのエネルギーを持っています。
参考)糖質・炭水化物は1g当たり4kcal、脂質は1g当たり9kcalのエネルギーを持っています。
焼酎やハイボールは糖が入っていないため、太らないという俗説は間違っています。
またアルコールはエンプティカロリー(空のカロリー)だから、エネルギーとして考えなくていいという人もいますが、
0kcalという意味ではなく生きるために必要な栄養素が含まれていない(空っぽ)という意味ですので、誤解しないようにしましょう。
アルコールにもしっかりエネルギーがあり、エネルギーの過剰により肥満になる可能性もありますので飲みすぎには気を付けましょう。
肥満が脂肪肝を加速させる
肥満になると、体の至る所に脂肪が蓄積されてしまいます。
さらに肝臓でも中性脂肪を大量に作るよう促されるため、肥満の人は脂肪肝になりやすいといわれています。
BMI25を超えた肥満体型の方は、長生きしてお酒を飲み続けるためにも、減量することを決断しましょう。
上手なお酒との付き合い方
酒をやめるのではなく減らす
お酒が好きでよく飲んでいる方は、それがストレス解消や日々の楽しみになっている方が多いです。
他には付き合いで多量に飲んでしまうことなどが多いと思います。
そういった方であれば、まだ制御が効くと思います。
好きなお酒、避けられないお酒を完全に断つのではなく、
アルコールに悪さをされない程度の適量に抑えて、お酒を楽しむようにしましょう。
しかし、1杯飲んだらもう1杯、2杯、3杯とアルコール依存に陥っている方は、
病院への受診など適切な方法でお酒と距離を置くことも必要になってきます。
適量の酒は体に良い
「酒は百薬の長」と言われるように、適量であればからだに良いことが分かっています。
健康的に長くお酒を飲むためにも、適量を意識して飲むようにすると良いでしょう。
目安はビールロング缶1本、チューハイレギュラー缶1本、日本酒1合程度です。
また、週に2日連続した休肝日を作るなど、肝臓の負担を減らすことも大切です。
まとめ
肝臓には、解毒・代謝・免疫の大きく3つの役割があることが分かりました。
アルコールにより脂肪が蓄積されやすくなることや、肝細胞に傷がつくことにより、アルコール性の肝疾患になるリスクが高まってしまいます。
また少量高カロリーなアルコールにより肥満につながる可能性もあります。
ストレス解消や日々の楽しみの一つとしてお酒を飲んでいる方は禁酒・断酒するのではなく、減酒をして適量のお酒を楽しんで長く健康でいることを心がけて見てください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
参考
尾形哲. ”肝臓こそすべて”.株式会社新星出版社,2022年8月,4~5,118~121,167~172ページ
アルコール性肝障害の症状は? アルコール性肝炎や脂肪肝の症状を解説(メディカルノート)
↑この他にも、糖との関係、薬との関係、肝臓の大切さや脂肪肝改善方法などについて書かれています。ご興味のある方は、ぜひ買ってみてください。