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MCT(中鎖脂肪酸)の効果や摂取時のポイントなど【高齢者と栄養】

「ときどき、MCT(中鎖脂肪酸)配合と書かれているものがありますが、MCT(中鎖脂肪酸)とは何ですか?」

「エネルギー補給目的でMCTを使いたいのですが、使用方法を教えてください。」

「MCTが入っている栄養補助食品を教えてください。」

などのお悩みはありませんか?

この記事では、MCTの効果や摂取についてのポイント、MCTが摂れる栄養補助食品などについてお話します。

MCT(中鎖脂肪酸)とは

MCTとは、脂質を構成する成分の1つです。

Medium Chain Triacylglycerolの略で、日本語では中鎖脂肪酸と言います。

一言では伝えられないので、細かく説明していきます。


まず、脂肪酸とは脂質を構成する成分の1つです。

脂肪酸は、構造の違い(炭素数)により以下のように分けられます。

炭素数6以下:短鎖脂肪酸

炭素数8~10:中鎖脂肪酸

炭素数12以上:長鎖脂肪酸


「短鎖・中鎖脂肪酸」と「長鎖脂肪酸」では、代謝経路が異なります。

基本的に、摂取する脂質は長鎖脂肪酸が多いので、長鎖脂肪酸から説明します。

長鎖脂肪酸は、小腸で消化吸収された後、リンパ管、胸管を経て静脈を通って肝臓に取り込まれます。
その際に、遊離した脂肪酸はエネルギーを供給したり、脂肪組織に取り込まれ貯蔵されます。(体脂肪)

それに対して短鎖・中鎖脂肪酸は、小腸から門脈を経て肝臓に取り込まれます。
長鎖脂肪酸に比べ、消化・吸収が早く、短時間でエネルギーとして使われます。


中鎖脂肪酸は門脈系で肝臓に輸送され、脂肪組織に取り込まれないため、体脂肪として蓄積されにくいことが特徴です。

また、素早くエネルギーを供給できることから、高エネルギーを必要とする腎疾患の食事療法などに利用されています。

MCTに期待できる効果

エネルギー源になる

MCTは素早く消化・吸収されるため、エネルギーとして使われやすいです。

他にも素早くエネルギー源となる栄養素というと炭水化物(糖質)がありますが、

炭水化物は1g当たり約4kcalのエネルギー産生に対して、

脂質は1g当たり約9kcalものエネルギーを産生します。

MCTも脂質のため、MCTを使うと少量で高エネルギー得ることができます。


高齢者では、エネルギーやたんぱく質の不足による低栄養が問題となっています。

その大きな原因が、「食思不良による食事摂取量の低下」です。

MCTを用いることで、少量高カロリーを得ることが可能となり、エネルギー不足を補う一役となります。

肥満の予防・改善

脂質が少量高カロリーなことは、食欲が低下している方や、エネルギーを多く必要とする方には嬉しい限りですが、

普通の脂質(長鎖脂肪酸)を多く摂ってしまうと、体脂肪として体に蓄積されてしまい、肥満へと繋がり、生活習慣病などの原因にもなりかねません。

しかし、MCTは脂肪組織に取り込まれず、脂肪組織において体脂肪の元であるトリアシルグリセロールを合成しないため、体脂肪として蓄積されにくいです。

また、エネルギー源として消費されやすいため、脂肪として蓄積されるより早くエネルギーとして消費されることが期待できます。

そのため、使い方によっては、逆に肥満の予防・改善効果も期待できます。

(長鎖脂肪酸の多いドレッシングを、中鎖脂肪酸のドレッシングに変えるなど)

食後の血中中性脂肪値上昇抑制

MCTは門脈系で肝臓に輸送されるため、血中の中性脂肪値の上昇が無いことが分かっています。

また、MCT10gの含まれている油脂飲料またはピラフ料理の油として用いた研究では、食後の血中中性脂肪濃度の低下を観察しています。

このことから、脂質の過剰摂取によって起きやすい中性脂肪値の異常を抑えられる可能性もあり、健康に良いと考えられます。

MCTの摂り方

MCTを食材から摂ることは難しいです。

理由は、その他の余分な脂質も摂れてしまうためです。

そのため、オイルを料理などに混ぜて使うことをおすすめします。

ドレッシング

MCTと調味料を合わせてドレッシングを作り、

サラダなどにかけて食べる事で、サラダに含まれている脂溶性ビタミンの吸収率も増加します。

ヨーグルト

ヨーグルトに混ぜても、油っこさを感じずに食べる事ができます。

同時に腸内環境改善効果も期待できるので良いですね。

味噌汁

味噌汁とも相性が良く、コクがでます。

飲みにくさは感じすに食べられると思います。

ご飯・お粥

ご飯などにかけることでエネルギーアップになります。

つやが出て綺麗に見えますが、多量に入れると油を感じてしまうので少量がおすすめです。

MCTを摂るときのポイント

1日9g未満を目安に

MCTは脂質ですので、摂りすぎてしまうと脂質(エネルギー)の過剰摂取になる恐れがあります。

MCTの上限量は定められていませんが、健康効果を感じられる量を目安量にすることが最適だと考えます。

そこで、ある研究では、肥満女性を対象として摂取エネルギー量を2200kcal以下に制限して、MCTを8.9g/日摂取させた結果、1~2週間後に体脂肪蓄積抑制効果が得られたとのことです。

このことから、1日9g未満であれば健康的な範囲であると考えます。

加熱調理には使わない

MCTは他の油と比べて、発煙点が低く140℃程度で煙が出て燃えてしまいます。

炒め油や揚げ油などの用途で使うと、調理中に火事になる危険がありますので、絶対にやめましょう。

料理にかけたり加えたりするなどの使い方をしましょう。

MCT配合のおすすめの栄養補助食品

食思不良の方などでは、MCTが使われていて少々高カロリーの栄養補助食品を活用すると良いでしょう。

ダイエット目的の場合は、MCT100%のオイルorパウダーが良いです。

アイソカル100

(出典:amazon.co.jp

飲料タイプでMCTが2.4g入っており、手軽に摂りやすい。


PFC比を見ると脂質が多いことが分かるが、中鎖脂肪酸を除く脂質割合は25%と許容範囲内になる。


食思不良の場合は、1日3回食事と共に飲むことが多いが、3回飲んでもMCT7.2gと1日の目安量9g未満に抑えることができる。

また、ビタミン・ミネラルも摂れるため、栄養バランスを整える一役にもなる。


運動前などにも手軽に摂れるため、非常に使い勝手が良い。

メーカーネスレ内容量(ml)100 
用途エネルギー・
たんぱく質補給
エネルギー(kcal)200
MCT(g)2.4たんぱく質(g)8.0
アレルゲン
大豆
ゼラチン
脂質(g)8.0
PFC比16:36:48炭水化物(g)25.0
味の種類9種類食塩相当量(g)0.27~
0.35
備考ビタミン・
ミネラル配合
水分量(g)70
食塩相当量は味により異なる

アイソカルゼリー もっとハイカロリー

(出典:amazon.co.jp

脂質14.2g中、6.0gがMCTである。


一見脂質過剰のように思えるが、MCTを除く脂質量は8.2gとやや多い程度。


MCTの目安量からしても、1日1個なら問題なく摂取可能。


1つ50gと非常に小さく、食べきりやすいサイズ。
それでいて、200kcalも摂れるため、低栄養対策としてかなり良いアイテム。


ゼリー商品のため、嚥下能力が低下している人でも食べられる可能性がある。

メーカーネスレ内容量(g)50 
用途エネルギー補給エネルギー(kcal)200
MCT(g)6.0たんぱく質(g)4.0
アレルゲン大豆脂質(g)14.2
PFC比8:64:28炭水化物(g)14.0
味の種類4種類食塩相当量(g)0.2
備考水分量(g)17

ブイ・クレス ハイプチゼリー

(出典:amazon.co.jp

脂質6.0g中、半分の3.0gがMCTである。


1つ23gと非常に少量で、おやつ感覚で食べる事ができる。


ほんの少しだけエネルギーを摂りたい場合にも使えて、食思不良の方にも、少量であるため食べてもらいやすく、様々なシチュエーションに合うアイテム。


ニュートリーのブイクレスシリーズであるため、ビタミン・ミネラルが入っている点も特徴で、美容意識の高い人にもおすすめできる一品。


しかし、たんぱく質が入っていないため、これを補食のメインにすることはおすすめできない。
補食の中のサブの補食。

メーカーニュートリー内容量(g)23 
用途エネルギー補給エネルギー(kcal)80
MCT(g)3.0たんぱく質(g)0
アレルゲン脂質(g)6.0
PFC比約0:67:32炭水化物(g)6.5
味の種類2種類食塩相当量(g)0.01
備考ビタミン・
ミネラル補給
学会分類2021
コード0j
水分量(g)10.0

MCTオイル(パウダー)

(出典:amazon.co.jp

MCTだけ摂りたいという方は、MCTオイル(MCTパウダー)がおすすめ。


無味無臭のオイル(パウダー)であるため、料理に加えるだけでMCTを摂ることができる。


エネルギー補給目的の場合は、過剰摂取に気を付ければ何にかけても大丈夫。


ダイエット・美容目的の場合は、サラダのドレッシングとして使う事や、スムージーに入れて飲むなど、野菜と一緒に摂ることがおすすめ。


MCT商品なら沢山あるが、栄養補助食品として展開しているメーカーは数少ない。


日清オイリオの商品は、病院などでの使用実績もあるため、安心して使うことができる。

メーカー日清オイリオ内容量(ml)400 
用途エネルギー補給エネルギー(kcal)54
MCT(g)6.0たんぱく質(g)0
アレルゲン脂質(g)6.0
PFC比0:100:0炭水化物(g)0
味の種類食塩相当量(g)0
備考水分量(g)0
※栄養成分は食品6g当たりの値

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まとめ

MCT(中鎖脂肪酸)とは、脂質を構成する脂肪酸の事で、長鎖脂肪酸に比べて消化・吸収が早くエネルギーとして使われやすいことが特徴です。

エネルギー源になることや、逆に肥満の予防目的でも使うことができます。

過剰摂取を防ぐためにも、1日9g未満を目安にすることをおすすめします。

そんなMCTが入っている栄養補助食品も紹介しました。




医師・栄養士の指導を受けている方は、指導に基づいて使用されることを推奨します。
また、栄養補助食品の多量摂取により、健康が増進するものではありません。
食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、バランスの良い食事を心がけましょう。

参考

林淳三 「三訂 基礎栄養学」,建帛社,2016年12月53~59ページ

脂肪酸について、短鎖脂肪酸・中鎖脂肪酸・長鎖脂肪酸の分類で解説

中鎖脂肪酸の栄養学的研究一最近の研究を中心にー,青山敏明,オレオサイエンス第3巻第8号(2003)

Value of VLCD supplementation with medium chain triglycerides,M Krotkiewski(2001)