「たんぱく質ってどんな働きをしているんだろう?」
「たんぱく質は1日にどのくらい摂ればいいんだろう?」
などのお悩みはありませんか?
この記事では、たんぱく質の働きや摂取量、たんぱく質を多く含む食品などについて説明します。
目次
たんぱく質とは
たんぱく質とは、多数のアミノ酸が結合した物質です。
機能面では、血液や筋肉などの構成成分や代謝調節・免疫機能などに関与する重要な栄養素です。
たんぱく質は英語で”protein”とい言います。
そのため、「プロテイン」「P」などと呼ばれることもあります。
たんぱく質はエネルギー産生栄養素(三大栄養素)の一つで、
1g当たり 4kcal のエネルギーを持ちます。
たんぱく質は、約20種類のアミノ酸から構成されています。
アミノ酸のうち、
体内で合成することができないため、食事から摂取する必要があるアミノ酸(必須アミノ酸)が9種類あり、
体内で合成できるアミノ酸(非必須アミノ酸)が11種類あります。
アミノ酸が複数結合すると、たんぱく質(アルブミンやコラーゲンなど)となり、体内の構成成分などとして役割を果たしています。
たんぱく質の役割
骨格や筋肉が主にたんぱく質でできている、ということだけでなく、
運動から体内の代謝まで、生命の維持や活動にとってたんぱく質の役割は極めて重要です。
体の構成成分
たんぱく質は、細胞を構成する物質です。
骨、筋肉、血液、皮膚、毛髪、結合組織などを形成しています。
例えばコラーゲンは、骨や軟骨、腱の成分として、また細胞間物質として体内に最も豊富に存在しています。
また、筋タンパクのアクチンやミオシンは、筋肉の収縮や弛緩により運動に関与しています。
代謝調節
たんぱく質は多様な生理的機能をもっています。
例えば、代謝を調節するホルモンとして、
血糖値を一定に維持するために重要な働きをするインスリン
タンパク合成を促進し、筋肉や皮膚に重要な働きをする成長ホルモン
などが、アミノ酸から作られています。
免疫機能
生理機能の一つである免疫機能にも関与しており、
例えば、抗原抗体反応をする免疫グロブリンや、
出血時の血液凝固反応をするフィブリノーゲンなどが、アミノ酸から作られています。
エネルギー産生
アミノ酸は代謝されると最終的にエネルギー源となります。
基本的にエネルギーになる栄養素は、糖質(炭水化物)や脂質ですが、
それらからのエネルギーが不足すると、たんぱく質本来の機能である体の構成成分などを犠牲にし、エネルギーを産生します。
一方、十分なエネルギー源が存在する場合、食事たんぱく質は、まず体の構成成分や生体の機能維持のための供給源として利用され体に残るようになっています。
例えば、長時間エネルギーを消費するマラソン選手は筋肉もエネルギーとして消費されるため、見た目の筋肉量が少なく痩せ(細い)体型の方が多いです。
逆に、一瞬しかエネルギーを消費しない短距離走の選手は糖分や脂肪分をエネルギーとして消費し、筋肉量は減らないため、見た目の筋肉量が多くムキムキ体型の方が多いです。
その他
その他にも様々な役割があり、
・生体内反応の触媒となる酵素
・物質を輸送する(血液)
・浸透圧の調節
など、重要な役割を担っています。
たんぱく質の1日の摂取量
たんぱく質の摂取量は、日本人の食事摂取基準2020年版において、
「推奨量」と生活習慣病の発症予防を目的とする「目標量」の2つが定められています。
推奨量
目標量
65歳以上への注意書き
65 歳以上の高齢者について、フレイル予防を目的とした量を定めることは難しいが、身長・体重が参照体位に比べて小さい者や、特に 75 歳以上であって加齢に伴い身体活動量が大きく低下した者など、必要エネルギー摂取量が低い者では、下限が推奨量を下回る場合があり得る。この場合でも、下限は推奨量以上とすることが望ましい
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書(たんぱく質)
まとめると…
推奨量としては、
男性では、60g摂りましょうね。
女性では、50g摂りましょうね。
目標量としては、
1日1800kcal摂取する場合、
67.5~90gくらいは摂りましょうね。
ただし、高齢者などで1日1200kcalしか摂取できない方の場合、
目標量では45~60gと設定されるけど、推奨量以上摂ることが望ましいので、
男性の場合)60~60g
女性の場合)50~60g
と、推奨量を下限として摂りましょうね。
要するに、
基本的には目標量を第一指標として、かつ少なくとも、
男性では、60g以上
女性では、50g以上
摂りましょうね。ということです。
たんぱく質の過不足
たんぱく質の不足による悪影響はなんとなくわかるかもしれませんが、過剰摂取も悪影響を及ぼします。
たんぱく質が不足すると…
たんぱく質の摂取不足では、フレイル及び生活習慣病などに注意が必要です。
ーー フレイル及びサルコペニア ーー
フレイルとは「虚弱」という意味で、体重減少や活動量低下、歩行速度低下などにより判定されるものです。
サルコペニアとは「加齢による筋肉量の減少」という意味で、歩行速度低下や筋力低下などによって判定されます。
習慣的なたんぱく質摂取量とフレイルの発症率又は罹患率との関連を検討した研究をまとめたものによると、
観察集団内における相対的なたんぱく質摂取量が多いほど、フレイル発症率又は罹患率が低い傾向があるとしています。
また、加齢に伴って減少していく筋肉量及び筋力を維持するうえで、つまりサルコペニアを予防するうえで、若年及び中年成人に比べて高齢者では多くのたんぱく質摂取が必要とされています。
これらの事を考慮した結果、フレイル及びサルコペニアの発症予防を目的とした場合、高齢者では少なくとも体重1㎏当たり1.0g/日以上のたんぱく質摂取が望ましいとされています。
ーー 生活習慣病 ーー
たんぱく質の摂取不足が、脳卒中のリスクになる可能性が示唆されています。
また、たんぱく質の摂取不足が筋力低下などを招き、活動量が低下することにより、
運動不足が原因となり生活習慣用の発症リスクを高めてしまうことも考えられます。
たんぱく質を摂りすぎると…
たんぱく質の摂りすぎでは、2型糖尿病の発症リスクとなる可能性が示唆されています。
これに関しては、たんぱく質が原因というよりも、動物性たんぱく質摂取時に動物の脂質(飽和脂肪酸を多く含んだ脂質)を摂取することが原因であるとも考えられています。
また、たんぱく質を必要以上に摂取した場合、余分なたんぱく質は筋肉や血液などの構成成分とはならず、脂肪へと変換され体に蓄積されることが分かっています。(体脂肪)
筋力低下が心配だからといって、たんぱく質を過剰に摂取することはやめましょう。
多くても体重1㎏当たり2.0g/日未満に抑えることが妥当でしょう。
少なくても多くても良くないので、推奨量・目標量をもとに適切な量を摂るようにしましょう。
たんぱく質と他の栄養素の関係
糖質・脂質とたんぱく質
基本的には、糖質や脂質から先にエネルギーとして消費されますが、
糖質や脂質によるエネルギーが足りないときは、たんぱく質がエネルギーとして使われてしまいます。
そのため、たんぱく質の構成成分や生理機能としての栄養効果を十分に得られなくなってしまいます。
たんぱく質の効果を十分に得るには、糖質や脂質もしっかりと摂る必要があります。
ビタミンとたんぱく質
ビタミンB6はたんぱく質を代謝する際に必須の補酵素となります。
ビタミンB6があることにより、たんぱく質が筋肉や血液などの材料になることができます。
さらに、
葉酸はアミノ酸の生成や変換などに、
ビタミンCはコラーゲンの生成などに関与されることが知られています。
たんぱく質を摂るときはビタミンも一緒に摂るようにしましょう。
たんぱく質を多く含む食品
たんぱく質は、肉・魚・卵・大豆製品などに多く含まれています。
日常的に使用される食品のなかで、たんぱく質が多い食品をまとめてみました。
肉
鶏ささみ | 19.7g |
鶏むね 皮なし | 19.2g |
豚ロース 脂身つき | 17.2g |
牛肩 脂身付き(輸入) | 19.0g |
魚
かつお 春獲り | 20.6g |
きはだまぐろ | 20.6g |
子持ちがれい | 19.9g |
しろさけ | 18.9g |
鶏卵
全卵 | 11.3g |
卵黄 | 13.8g |
卵白 | 9.5g |
大豆製品
木綿豆腐 | 6.7g |
絹ごし豆腐 | 5.3g |
納豆 | 14.5g |
大豆 ゆで | 14.1g |
その他
牛乳 | 3.0g |
ブロッコリー ゆで | 2.6g |
たけのこ ゆで | 2.4g |
野菜類の場合、他にも菜っ葉類はたんぱく質が比較的多い傾向にあります。
たんぱく質補給用の栄養補助食品
たんぱく質補給の栄養補助食品については以下の記事でまとめています。
興味がありましたら、ご覧ください。
【たんぱく質補給】管理栄養士おすすめ栄養補助食品《9選》まとめ
たんぱく質とは、多数のアミノ酸が結合した物質です。
機能面では、血液や筋肉などの構成成分や代謝調節・免疫機能などに関与する重要な栄養素です。
1日の摂取量は、男性60g以上、女性50g以上を目安に、活動量などにより異なります。
たんぱく質が不足すると、体重や筋力が減少しフレイルなどの原因になりますので注意しましょう。
また、たんぱく質だけを取るのではなく、糖質・脂質・ビタミンなど他の栄養素もバランスよく摂るようにしましょう。
たんぱく質は、肉や魚、卵、大豆製品などに多く含まれています。
参考
林淳三 「三訂 基礎栄養学」,建帛社,2016年12月,71~92ページ
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書(たんぱく質)(厚生労働省)