「最近、便秘がひどくて困ってる」という方はいませんか?
それは、加齢により便秘になりやすくなることが関係しているかもしれません。
この記事では、高齢者の便秘の原因や便秘に有効な食材についてお話しします。
便秘の基礎知識
便秘とは、十分な排泄ができず、残便感、腹満感、腹痛などを生じて不快を感じる状態のことです。
高齢者で最も多い便秘が「弛緩性便秘」という種類で、
食習慣の乱れや排便習慣の変化、大腸の運動・緊張の低下などが要因です。
この場合は一定期間継続して、食習慣を改善することで解消できることがほとんどです。
その他にも、「けいれん便秘」「直腸性便秘」「器質性便秘」「他疾患による便秘」などの種類があり、
その種類に合った適切な対応をすることが求められます。
高齢者の便秘の原因
腸管運動の鈍化
大腸の通過スピードが落ちてくることや、
消化管全体の運動が悪くなることにより便秘になりやすくなります。
食事量の変化
食事量の低下や、油の不足、食物繊維の不足などにより、
便の材料が不足することで、便が押し出されにくくなり便秘になりやすくなります。
また、水分不足も原因の一つです。
運動量の変化
運動量・活動量の低下により、排便に必要な筋力が低下してしまいます。
もしくは、長時間横になっている場合、重力による縦の影響を受けなくなるため便秘になりやすくなってしまいます。
その他
その他にも、加齢により有病率が増加することや、
服薬の影響によるもの、糖尿病などの基礎疾患によるもの、腸内環境の悪化、うつや不安などの心理的要因などが便秘の原因になります。
便秘時の食事のポイント
便秘に有効な食材をしっかりと摂る食事を心がけましょう。
不溶性食物繊維
不溶性食物繊維が、腸の運動を促進して、消化管の通過速度を短縮させてくれます。
また、消化管内の水分によって超内容物の体積を増加させて、糞便量を増加させることで押し出しやすくなります。
具体的な食材例は以下の通りです。
水溶性食物繊維
水溶性食物繊維により、水分を保持し、便を柔らかく粘りのある状態にしてれます。
また、腸内を酸性にするほか、有害物質を吸着して体外に排出する作用もあります。
具体的な食材例は以下の通りです。
水分摂取
食物繊維を多く摂ったうえでの水分摂取は、排便回数を増加させることが示されています。
高齢者の水分摂取量の目安は「現体重(kg)×30」です。
体重50㎏の方でしたら、1500ml程度が目安です。
また、一般的には1200ml~2000ml程度が摂取目安だとされていますので、先ほどの計算式で2000ml以上の結果となった場合でも2000mlまでを上限とした目安にすることをおすすめします。
食物繊維と水を効率よく摂る方法が、ゼリーです。
食物繊維(難消化性デキストリン)と寒天を混ぜたゼリーを食べることで、水溶性食物繊維と水を摂れ、便が流れやすくなります。
市販の場合ですとこのような商品があります。
難消化性デキストリンに関して詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
難消化性デキストリンの効果や摂取時のポイントなど【高齢者と栄養】発酵食品
発酵食品には、腸内細菌であるビフィズス菌を増やして、腸内環境を整える効果が期待できます。
さらにヨーグルトなどには乳酸菌も含まれており、腸内環境への期待がより高まります。
具体的な食材例は以下の通りです。
その他
その他にも玉ねぎなどに含まれるオリゴ糖はビフィズス菌を活発にし、
オリーブオイルに含まれるオレイン酸は潤滑油となって便の通りをよくする働きに期待ができます。
その他の有効なケア
運動
適度な運動は、腸に刺激を与えてくれます。
また、運動により筋肉が鍛えられると、排便時に前屈みの姿勢を保てるようになります。
マッサージ
腹部マッサージも効果的で、腸の流れに沿ってマッサージしましょう。
温めるマッサージもありますが、低温やけどには気を付けてください。
薬
整腸薬、漢方薬、刺激性下剤などの薬からのケアもありますが、
自己判断をするのではなく、医師や薬剤師などに相談するようにしましょう。
まとめ
高齢者で最も多い弛緩性便秘は、
一定期間継続して、食習慣を改善することで解消できることがほとんどです。
高齢者の便秘の原因は、腸管運動の鈍化や食事量の変化、運動量の変化などがあります。
便秘時には「不溶性食物繊維」「水溶性食物繊維」を多く含んでいる食材、「適量の水」「発酵食品」などを食べることがポイントです。
食事以外にも、運動やマッサージ、薬なども有効なケアです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
参考
八島妙子. ”老年看護ぜんぶガイド”.株式会社照林社,2022年6月,58~59ページ
小西敏郎,森本修三,小城明子. ”見てできる栄養ケア・マネジメント図鑑 栄養管理ビジュアルガイド”.株式会社学研メディカル秀潤社,2018年9月,39ページ
田村佳奈美. ”病院・介護保険施設・在宅で活用できる 高齢者の栄養ケアポイントBOOK”.株式会社メディカ出版,2024年5月,101,104ページ
↑その他にも、アセスメントや症状・疾患別の基本情報、老年看護技術について詳しく書かれています。
↑その他にも、栄養管理やアセスメント、食事療法など栄養ケアのすべてを網羅しています。管理栄養士なら手元に置いておいて損はありません。
↑その他にも、高齢者の栄養ケアについて、「〇〇ではどうしたらいいの?」と具体的な悩みと共に解決策が示されています。
こちらも管理栄養士におすすめの1冊です。